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権利者側の言い分は


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 痛いニュースで『【著作権】 「年100万超の著作権使用料、突然なくなるとショック」「期間70年に延長を」と権利者ら…文化審』というエントリーを見つけました。ここには権利者側の言い分しか掲載されていないので、元記事(ITProの『著作権の保護期間延長問題、権利者側への反論相次ぐ――文化審』)を読んでみることに。

 この問題、著作権法での保護期間をどうするかというものですね。現行では(著作権者が死亡してから)50年間なのを、70年間に延長しようと議論している訳なんですが・・・、どう読んでも権利者側の意見って「わがまま」を言っているような気がしてなりません。

 権利者側の意見としては

「谷崎潤一郎、江戸川乱歩、横山大観などはあと数年で保護期間が切れる。彼らの遺族が受け取る著作権使用料は、それぞれ年間100万円を超える額だ。これらが突然切れるのはショッキングなこと。遺族の権利を守りたいし、それが作家のインセンティブ向上をもたらす」
(ミュージカルの世界で脚本、歌詞、楽曲を日米英の創作者が分担するというケースを仮定し、保護期間の算出方法の違いを説明する資料を配布。その上で、)「初演国が米国か英国か日本かによって、保護期間が変わってきてしまうという問題がある。こうした保護期間の長短が原因で、日本国内でのミュージカルの上演に影響が出る可能性も考えられる」
「作品を発表する場が有体物からインターネットへ変わってきている。欧米より先に保護期間が切れたからといって、日本のサーバーから世界へ向けてコンテンツが発信されるのを放っておいて良いのか。実際に不都合が現れる前に対策を講じておくべき」
「安定的な職業に就く人には退職金もあるし、株式や土地を買うこともでき一定の財産を残せる。一方で創作者は、生前にそうした財産を残すことはできず、ただ創作物を遺族に遺すだけだ。安定的な職業の人と差があって良いのか」
「希有な才能と並はずれた努力をした人を誰がとがめられるというのか。そういう人は死後50年といわず、いくらでも稼いで問題はないはず。議論の方向性があまりに平準化の方向に向かうのは良くない」
「日本が今後コンテンツ分野で海外展開していく中で、保護期間が短いままでもリーダー国として発言力を持てるのか。広い視点で保護期間問題を考えるべき」
 一方、反対意見としては
「日本文藝家協会は著名作家の遺族、それも40~50代以上の遺族のためだけに、現在自由に使えている(死後50年以上70年未満の)著作物を使えなくさせようとしている」
「谷崎潤一郎や横山大観の著作権切れは、そんなに悪いことなのか。十分に儲けた人がさらに収益を得るだけ。祖父の著作権で孫がのうのうとするというのでは、社会正義としてどうなのか」
「向こう10年で保護期間が切れる著作物のうち、経済的価値のあるものは1%以下だろう。その1%のために保護期間を延長すると、残り99%超の流通が阻害される。また、日本と欧米では著作権の規定が異なることも多いし、欧州と米国でも違う点は多い。なぜ保護期間問題だけを選別的に取り上げ、欧米に合わせようとするのか」
「日本のサラリーマンでも、近年は退職金が出ない人が増えている。創作者でも株式や土地を買うことはできるし、創作者とサラリーマンの違いはさほどない。日本の著作権法は罰則規定が世界的に見ても厳しくなっているし、米国の著作権法では相互主義を排除している。欧米にそろえるため保護期間を延長するというのは理由にならないし、延長したところで完全にそろうわけではない。都合良く長い方に合わせようとしているだけではないか。もし本当に保護期間をそろえたいならば、世界知的所有権機関(WIPO)に提案して、その決定に従うというのはどうか」
「以前の会合で実施した関係者からのヒヤリングにおいて弁護士の福井健策氏は、著作権に関連する契約を多数手掛けてきたが、法律の規定の違いが契約に影響することは一度もなかったと表明していた。そうした意見は尊重すべき。保護期間が短いからといって、日本で著作権関連の契約をしないという人はいないだろう」
「欧州連合(EU)では保護期間を延長する際、商品の自由流通や平均寿命の延びを理由として挙げていたが、そうした理由を日本にそのまま当てはめられるのか。物流や貿易を域内で自由化しているEUと日本は異なるし、日本のサーバーで公開したコンテンツに、例えばフランスからアクセスされることがどれくらいあるのか検証が必要。平均寿命も、かつて55歳だったものが75歳に延びていれば、その分著作者の存命期間が延び、保護期間もその分延びることになる。また著作者の寿命が延びれば、著作者の死亡時点における子供の年齢も上昇するわけで、遺族の財産保護の必要性を正当化できないのでは。賛否いずれにせよ、十分な根拠を出すよう慎重に検討すべき」

 どっちが説得力あるかって、言うまでもないと思います。どう考えたって反対側のほうがまともな意見としか思えない。

 著作者が亡くなってからの権利を一定期間保護する意義はわかります。例えばゴッホは生前はまったく評価されていなくて、死んでから評価されています。そういう意味では保護すべきという意見には反対しません。でも延長すべきという意見は、全く論理的でないと思いませんか?。
 元々アメリカが50年を70年に延長した理由、これって自国著作物(つまり初期のハリウッド作品など)を保護するためだと言われています。まあ、ミッキーマウスを守りたい訳です。つまりアメリカのわがままなんですよ。

 また、親の財産を受け継ぐことはよしとしましょう。でも70年に延長して孫の代まで受け継ぐ正当性ってあるんでしょうか!?。ましてや「年間100万円超の著作権使用料、突然なくなるとショック」なんてどう考えてもエゴです。「祖父の著作権で孫がのうのうとするのは、社会正義としてどうか」のほうが納得できると。




 なんか不毛な議論とも思えてしまうのですが、それでも70年に延長するんでしょうか。権利者側から、納得できる意見が出てこないにも関わらず。

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2007年09月04日 21:08に投稿されたエントリーのページです。

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